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2009年5月29日 (金)

分析家の独り言 202 (非行の息子にオールOKして)

ラカン精神科学研究所のホームぺージにも書いた、非行の息子にオールOKで対応したクライアントが言う。

非行がエスカレートしていく中で、大きなお金を家から持ち出して行った息子。

月に100万円を超えるときもあったという。

一度に80万円を要求したときも、分析者である私に、「オールOKしてください」と言われた。

このときクライアントは、この人(分析者)はわかって言っているのか。

8千円じゃないんよ、80万円よ。それでもOKするのかと思ったという。

しかし今から思うと、クライアントは、分析者が常にぶれなかったことが良かったと言う。

あの時もし分析者が、「80万はいくらなんでも高額だから、それはOKしないでください」と言ったら、逆にまた大丈夫かと疑問を持っただろうと。

オールOKに例外はないと、私は次々出される高額な要求にも応えてくださいと言い続けた。

親がボロボロになってでも、お金を出し続けることで、子どもが自分を見つめ、考え出したのだろう。

おそらく子どもは、40万円を要求しても、80万円を要求してもこの親はなんとかして出してくる。

しかし、このまま自分が要求し続ければ、いつか親もつぶれ、自分もまた立ち行かなくなることもわかったのだろう。

命をかけて出し続けたことが、息子を変えた。

最初は他に方法もなく、本当ならやりたくないが、やるしかなくてオールOKをしていった。

正直はじめは、お金ばかりか日常の些細な要求に応えながらも、今度この息子は何を言い出すのだろうとビクビクしていた。

しかし、オールOKで対応し、お金も言われるままに出すうち、息子から「おかん、買い物行くんやろ。○○買って来て。どうせスーパーにも寄るんなら、ついででええわ。急がんでもええし」

という言葉が聞かれるようになった。

それまでは、言ったらすぐ買って来いだったのがである。

そういう言葉が聞かれるようになってから、母であるクライアントは息子を愛しいと思うようになっていったという。

これほど高額な要求を出されるのは特殊なケースかもしれないが、それでもオールOKすることで子どもは変わっていった。

息子さんは、今は家庭を持ち、社会のなかで立派に真面目に働いている。

当時高額なお金の要求と共に家庭内暴力もあり、子どもが社会適応し、もう何の問題もないように思われるようになっても、クライアントには、辛く恐怖に彩られた過去を振り返ることがなかなかできなかった。

今ようやく、大変だったときのことを思い返せる余裕ができたという。

よくクライアントはあの状況のなかで、オールOKし続けたと思う。

頭が下がる思いである。

並々ならぬ苦労の末に、今は穏やかな日々と幸せを手にした。


http://lacan-msl.com/contents.htmlラカン精神科学研究所のホームページ

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