分析家の独り言(子どもの好み・感覚を尊重する)
たまたま見たテレビで、ある女優さんが話していた。
「デパートの店員になりたかった」と言う。
彼女には9歳上に姉がいて、服など身の回りの物のほとんどが姉のお下がりだった。
9歳も上だと、例えば服の流行も子どもとはいえ古くなる。
小学校入学時のランドセルも姉のお下がりで、レンガ色に変色しぺっちゃんこだった。
だから彼女は、新しい物に触れたかった。
最新の流行のものが何でもそろうデパートの店員になれば、常に新しい物にかこまれていられると考えた。
「欠けたものが欲望になる」と言うが、まさにその通りなるほどと納得。
彼女は新しい、自分の好みの服や物を持ちたかっただろう。
また、親の好みを子どもに押し付けて、何でも買って着せてしまったのでは、子どもは着せ替え人形になる。
子ども自身の好きな色、形、デザイン、それらを尊重されるこも子どもにとっては大事なこと。
だから親が勝手に決めないで、子どもに聞いてほしい。
子どもも自我が出来てくると、親が買ってきた服を着なくなる。
それまでは親の好みで選んで着せられたが、良かれと思って買って来た服を着なくなり、それでは仕方ないと子どもに聞くようになる。
思春期を迎える子ども達には、服は対社会的仮面(ペルソナ)ともなり、他者にどう見られたいか、見せたいかなど、アイデンティティの問題も絡んでくる。
やたら鏡に自分を映して、服装などに気を使うのもこの時期である。
なかには、「誰もあんたなんか見てないよ(だから、何を着ても同じ)」と言う親がいる。
我が子の価値を親が引き下げることはないだろう。
自分が思い描く理想的自己像をつくり、外に出ていく。
娘達は出かけるときに、服が決まらず、「これとこれとどっちがいいと思う?」とか、「これでいいかな?」と聞いて来た時期があった。
こちらとしてはどちらでもいいと思うが、真剣に考えて答えないと怒る。
聞いてくる娘も自分の中では決まっているが、もう一押しして欲しいのだろう、どちらがいいか聞いておいて自分が思うのと違う方を言うと、「お母さんはセンスがない」とか、「いや、違う、こっちだ」とか言う。
「それなら聞かないでよ」と思うが、それにも付き合うことである。
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