分析家の独り言 347(意味の病 No,1)
「人間は意味の病である」とラカンはいう。
様々な現象に人は意味をつけ病んでいる。
その意味のつけ方が人によって違う。
あるクライアントは「人が自分を攻撃してくる」と恐れ、外に出られなくなった。
私も永い間、子どもの言動にマイナスの意味をつけては怒りまくっていた。
娘達はだた、「お腹すいた」、「抱っこして」、「一緒に遊んで」、「あれが欲しい」などと自分の想いを母親である私に言っていただけだった。
それに私は、「また親をこき使うのか」、「あんた達の女中じゃない」、「馬鹿にしてる」、「私は我慢してきたのにわがままだ」、と勝手に意味を付けた。
それに気付いてからは、腹がたったとき、なぜ私はこの事に腹が立つのだろうと考えるようになった。
娘と食卓で食事をしていて私の電気ストーブを娘が我が物のように使うことが気になっていた。
それでもまあいいかと思っていた。
食事の後、私は電動歯ブラシで歯磨をするが、娘は「私のそばで歯磨をしないで」、「食卓の横の私の部屋洗面所で磨いて」と言う。
「どちらにしても寒い」と私が言うと、「自分の部屋でエアコンをつければいい」と言う。
電気ストーブまでは我慢出来たが、歯磨の場所まで指定されるのかと腹がたった。
なぜ私は腹が立つのだろうと考えた。
すぐにはわからなかったが、訳がわかり、自分のコンプレックスをしっかりと自覚してからは腹が立たなくなった。
子ども時代のエピソードを思い出した。
小学生高学年頃だったろうか、日曜日に自分の部屋を掃除していた私に、父親が「今日は会(宗教)の集まりがあるから、その部屋の掃除を手伝え」と言った。
私は「今自分の部屋を掃除しているから、それが終わってから」と言った。
そう言った私に父は「自分の事は後回しにして、まず手伝うものだ」と言った。
恐い父に逆らえず、私は自分の部屋の掃除は後回しにして、嫌々父の掃除を手伝うしかなかった。
こういったことは日常的にあっただろう。
こうして私は自分のしたいこと(欲望)は後回しにして、人に合わさなければいけなかった。
いつも自分を殺して、他者に譲るという構造が出来てしまった。
しかし、それに納得はしていなかった。
それがずっと私の中で燻り続け、娘に「譲れ」と言われ無意識を刺激され、腹を立てたとわかった。
“欲望はけして譲ってはいけない”
しかし、子ども時代の私は「親の言う事は聞くもの、親に譲れ」というメッセージを受け続けた。
そして親となった私は、娘達にも自分の欲望は出すな、私に譲れと言ってきたのだろう。
親は養育する中で子どもに譲ってやる、これが親の役目である。
それが心良く出来るのは、親が子ども時代にその親に親の欲望は一時置いて、子どもである自分に合わせ譲ってもらったからである。
親が子どもに譲るのは、子どもの自我を大事にし育てるためにすることである。
親の自我が育っていなければ、子どもの要求に合わせ譲ることに抵抗を示し、応えることが出来ない。
子どもの要求に「自分に合わせ、譲れ」と言われていると取り、「親をバカにしている」、「生意気な」と意味を付けてしまう。
子どもにオールOKしようとしても出来ないのは、こういう親のコンプレックス(無意識)があるためだ。
嫌いだ、嫌だ、引っかかる、腹が立つ事それら全て自分のコンプレックスである。
これを一つ一つ紐解いて自覚し解消(=分析)していくと、腹が立たなくなる。
そして生きやすくなる。
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